前回に続いて日経225miniのトレーディングの話です。
「想定と反対の値動きが始まったときにどうするのか」事前に決めておいたほうがよいだろう、という教訓が前回得られました。そうしないと、精神的に消耗したり、機会損失になったりしそうです。
前回のブログで、1日の始値と終値の差の1年間の最大値の表は示しましたが、差の分布のグラフ(図1)も見てみましょう。

2019月〜2023年3月(n=1033)
ピークははっきりせず、最頻値は70円ですが、10円、50円、60円などの度数もほぼ同じです。105円で累積パーセンテージが50%に達します。わりと小さな動きが多いのだなと思いますが、大きな値にまで分布が伸びています。予測が外れているときに油断していると、どんどん反対の方向に動いて含み損が大きくなっていくかもしれません。
目次
■ロスカット(損切り)かな、やっぱり
証拠金の額に応じて証券会社が発動する強制ロスカットもありますが、そうではなく自分で予めロスカットの基準を決めて、取引を自分で管理したいですよね。
予想と反対の方向に一定以上動いたら反対売買を行って決済すると決めておくわけです。証券会社の「逆指値注文」というサービスを使えば、設定した価格で自動的に売買してくれるのでずっと相場を見ている必要もありません。
——どうせ損をするなら損は小さくしたい。でも値が戻るかもしれないし
予想と逆の動きが始まったら、すぐに決済して小さな損失で済ませたくなるかもしれません。10円逆方向に動いたときに決済すれば、1枚分の損失はわずか1000円です。
でも、予想の方向に戻ってきたら、得られたはずの利益を逃したということになります。
数時間以上のスパンでトレーディングするつもりなら、わずかな動きに反応する必要はないでしょう。
でも、いったいどの程度までなら予測と反対の動きを許容してもよいのでしょうか?
日中取引のみのデイトレードに絞って(その程度でないと私の手に負えないので)、作戦を考えてみましょう。
——デイトレード:始値→終値の動きと反対の動きはどこで止まる?
デイトレードをする想定で、日中取引の始値から終値への変化をみて、それとは反対の方向にいくら価格が動いたか(始値に対する安値[日中が上昇の場合]もしくは高値[日中が下落の場合]の差の絶対値)を2019年〜2023年3月の1033日分のデータからまとめてみました(図2)。始値と終値が一致していた日も17日ありましたが、そのときは始値と安値・高値の差の絶対値が大きい方を使って集計しました。

2019月〜2023年3月(n=1033)
たとえば横軸に「5」とあるのは最大で5円反対方向に動いたということで、分析対象の1033日のうち74日ありました。
ピークは5円で、累積パーセンテージは55円で50%を超え、160円で90%を超えます。ということは、(あくまで過去データからの予想ですが)165円をロスカットの閾値に設定しておくと、「もうちょっと我慢していたら利益が出たのに!」と悔しい思いをするのは予測が合っていた日の10%程度だろうといえます。
一番大きな反対方向への動きは470円でした。ロスカットの閾値を500円にしておくと、予測が合っていたのにロスカットに至ることはまずなさそうです。
でも、そんなに確率の低いところまでカバーする意味があるのでしょうか? 予測が外れている場合のことも考えないといけません。
(図2は、終値で見ると予測は間違っていたけれど、途中で発生していた含み益の最大値と読み替えることもできます。)
——デイトレード:始値→終値の動きと同じ方向の動きはどのくらい進む?
日中取引の始値から終値への変化をみて、それと同じの方向にいくら価格が動いたか(始値に対する安値[日中が下落の場合]もしくは高値[日中が上昇の場合]の差の絶対値)を2019年〜2023年3月の1033日分のデータからまとめてみました(図3)。始値と終値が一致していた17日については、さきほどと同様に始値と安値・高値の差の絶対値が大きい方を使って集計しました。

2019月〜2023年3月(n=1033)
階級は500円までは5円刻みですが、ラベルはスペースの都合で10円毎になっています。最後の二つの階級は505〜1000円と1005〜1500円です。
最低でも始値と終値の変動幅以上になるので当然といえば当然ですが、反対方向の値動きよりも大きな値の方に分布が広がっています。
ピークははっきりせず、僅差で140円が最頻値(1033日のうち25日)になっています。180円でやっと累積パーセンテージが50%に達します。
500円以上動いた日が1033日のうち63日(6.1%)もありました。
図3を見ていると、「どうせ損をするなら、なるべく傷の浅いうちに」と思ってしまいます。それに、始値と終値の差よりも大きな損が出るタイミングでロスカットしていたと後でわかるのも、あまり気持ちのいいものではなさそうです。
(図3は、予測の方向が正しかった日に発生していた含み益の最大値と読み替えることもできます。)
——反対方向と同じ方向のグラフを重ね合わせてみると?
反対方向の動きの図2と同じ方向の動きの図3を重ね合わせてみました(図4)。

2019月〜2023年3月
105円と110円で、反対方向と同じ方向のどちらの方が多いかが入れ替わっています。
当てずっぽうにトレーディングしているなら、反対方向に110円動いたらそのまま損をする確率が5割を超えたと判断すればよさそうです。
始値と終値の差の分布(図1)でも、累積パーセンテージが50%に達するのは105円です。ロスカットの閾値を110円に設定すると、予測が間違っていた場合、終値での決済に比べてロスカットにより損失が小さくなる日と大きくなる日が半々程度になると期待できます。
でも、予想の精度が高いのであれば、予測が合っている日の約20%でロスカットをしてしまう110円を閾値にするのは無駄を出しすぎです(図2参照)。
—それで、ロスカットの閾値の結論は?
候補はこんな感じでしょうか?
▶110円 「ほぼ当てずっぽうなんで、確率頼りです」
▶165円 「ちゃんと考えてるけど、ぼちぼちいこう」
▶180円 「あんまり無理はしないけど、自信はある」
▶200円以上 「自信があるから、攻めの姿勢でいく」
自分なりの閾値の候補を決めて、結果がどうなるかシミュレーションしてみるといいと思います!
■益出しの閾値も考えるといいかも
ロスカットほどクリティカルではないとはいえ、図1と図3を見比べると、含み益が大きくなっているうち(図3)に決済したほうが、引け(図1)で決済するよりも利益を大きくできそうだとわかります。
ただ、これもさじ加減が悩みどころで、益出しの閾値が高すぎると益出ししないまま含み益が減ってしまう頻度が高くなり、閾値が低すぎると本来はもっと稼げたところで利益を確定してしまう頻度が高くなります。
数値の処理に強い人は計算で最適値を見つけられそうですが、私はそこまではできません。図3で累積パーセンテージが50%になる180円に近い値がいいのではないかなぁと思います。
■閾値設定あり/なしで取引の損益を比較
最後に、2023年1〜3月に日経225miniの同じ方向の取引(1枚分)を閾値の設定なしで行った場合と、ロスカット180円/益出し200円と設定した場合の損益を比較してみましょう(現実の取引では決済時の価格が閾値と少しずれることもありますが、ここでは閾値通りの価格で決済したと想定しています)。ロスカット180円/益出し200円というのは、京都テキストラボ会社HPで公開している損益のグラフで使っているルールです。予測も京都テキストラボのDLPredictを使っています。

3月は閾値なしの方が利益が大きくなっていますが、1月や2月は閾値ありのほうがよい成績でした。おそらく、3月は正答率が高かったことが、閾値なしでもよいパフォーマンスとなった理由の一つでしょう。それほど正答率が高くない場合、やはり閾値の設定は効果がありそうです。
もっといろいろ試してみると面白いのだろうと思いますが、後は皆さんにお任せします!
(素人なので考えの浅いところや間違いもあったかと思いますが、どうぞお許しを。)