「日経平均の先物?」という人向けの説明

前々回のブログで予告した通り、「日経225mini」について書きます。私はトレーディング未経験者ですが、その弱みを逆手にとって素人目線の説明をしてみようと思います!

■日経平均株価が先物になる? なんのためのもの?

「日経225mini」をネットで検索するとすぐに、「日経平均株価(日経225)を対象にした先物」という説明が見つかると思います。

日経平均株価はいつも目にする/耳にするからなんとなくわかる。
※答え:日本経済新聞社が、東京証券取引所プライム市場に上場している銘柄から代表的な225銘柄を選んで算出している平均株価指数。

先物もなんとなくわかる。
答え:将来の決まった日に現時点で取り決めた価格で何かを売る/買うを約束する取引。

でも、「日経平均株価が先物として取引されるってどういうこと?」と思いませんか。

——先物取引の目的:リスク回避と資金運用

先物取引には価格の変動リスクを回避する(保険、リスクヘッジ)機能があります。
金融に疎い人が思い浮かべる先物取引の対象といえば、化石燃料や食糧だと思います(商品先物取引)。こういうものをある価格で将来のある時点(期日)で売り買いする約束をしておけば、将来の不確定性を減らすことができます。もちろん、「あの時に約束していなければもっと安く買えたのになぁ」というようなこともあるでしょうが、「こんなに高くなったら計画が狂う!」という事態は避けられます。

ただし、商品先物取引をするのは、その商品がほしい人だけに限りません。
取引を始めるにあたって必要なのは、証券会社に預けておく証拠金(担保)だけです。証拠金は約束の取引価格よりもずっと小さい金額です。
そして、期日の前であれば、反対売買(買う約束に対して売り、売る約束に対して買い)をして、差額を精算して取引を終了することができます。つまり、相対的に小さな証拠金で大きな金額の取引ができるということです。これをレバレッジ(てこ[レバー]の原理を使うこと)を効かせた取引といいます。
このため、差額で利益を上げようとする人たちも取引に参加します。
※個人の取引は、取引所との直接のやり取り(取引所取引)ではなく、契約している証券会社とのやり取り(店頭取引)になります。証券会社が定める手数料が引かれます。

まとめると、商品先物取引には、価格の変動リスクを回避しながら現物を売買する、資金を運用するの二通りの目的があります。

社会的な意義としては、将来のある時点での価格を想定した売買が明確なルールの下で活発に行われるため、透明度の高い公正な価格形成を行うことが可能だとされています。
(参考)農林水産省「商品先物取引について詳しく知りたい

——株価指数先物の場合

商品先物取引に対して、株価指数先物取引というものもあります。日経225miniもその一つですが、商品先物取引と違って、期日になっても株価指数と現金の受け渡しを行うわけではありません。株価指数を渡したり、受け取ったりできませんよね! 期日までに反対売買を行わなければ、精算価格というもので精算されます。

取引の目的としては、多くの株を持つ証券会社や金融が株価指数先物を売り建てて(まず売る約束をしておき)、保有株の時価の下落に備えるといったリスクヘッジがまず挙げられます。

商品先物取引と同様に、価格の変動を利用して利益を得る投機にも向いています。
取引額に比べて、実際に必要な資金(証拠金)の額が小さく、レバレッジを効かせた取引ができます。日経225miniの場合、日経平均株価の100倍が取引単位(株価が27,000円なら270万円が1枚分の価格)ですが、その取引のために必要な証拠金の最低額は十数万円です。
さらに、株価指数は企業の状況を平均化するもので経済・社会の大きな変動と連動して変化するので、個別銘柄について詳しくなくても変動がある程度予測できます。そのため、海外投資家も多く取引に参加しているようです。

もう一つ、裁定取引(アービトラージ)という手法の取引も行われます。
日経平均先物の価格は、理論的には日経平均株価に対して金利分と配当分を考慮した金額になるはずですが、多少のズレが生じることがあります。日本経済の先行きに不安になる(or 楽観的になる)ようなニュースが出て、投資家が先物を売り建てた(or 買い建てた)ときです。
そんなときに大手証券会社などが裁定取引を仕掛けます。決済日には日経平均株価によって決済される(ズレが解消される)ため、たとえば先物価格が下にズレていれば先物を買い建て、日経平均の全銘柄を空売りしておけば、ズレが解消された時点で反対売買・決済すれば必ず利益が得られます。
裁定取引の結果、日経平均も下がるので、実際のところ先物の決済日を待つまでもなくズレはすぐに解消されます。

■まとめ、日経225mini、日経225マイクロ

先物取引は、将来の決まった日に現時点で取り決めた価格で何かを売る/買うを約束するものです。売り注文からでも、買い注文からでも始められます。
その何かが値下がりしそうだと考えるなら売り建てて(まず売る約束をしておき)、実際に値下がりしたときに買い戻して決済すれば、その差額が利益となります。
株価が値上がりしそうだと考えるなら買い建てて(まず買う約束をしておき)、実際に値上がりしたときに転売すれば利益が出ます。

先物取引は資金の何倍もの取引ができる(レバレッジを効かせられる)うえに、日経225miniは取引単位が小さく個人投資家が容易に参加できます。2023年5月下旬にはさらに取引単位が日経225miniの10分の1の日経225マイクロも登場します。さらに個人の参加のハードルが下がりそうです。

ただし、投資家が一斉に同じ方向に動き出すと、反対売買をしようにもこれが成立しないというような事態が生じることも稀にですがあります。
1枚あたりの損失は多くの日には小さいかもしれませんが、1枚あたり日経平均株価の100倍(日経225mini)を取引しているのだという意識を忘れずにリスク管理(自分なりのルールを決めてそれを守る)をしたいものです。

以上、基本的な考え方を抑えておけば、証券会社のウェブサイト等でより詳しい情報・具体的な情報を調べたときに頭に入りやすくなると思います!