当てつけのため息

2024年9月3日

人への当てつけのため息はとても短く、ネガティブな感情をたっぷり伝える便利な言葉みたいなものだなぁと思います。でも、伝えられる方はものすごく嫌な気分になるので、絶対使わないほうがいいですよ!

■旅行中の運転で

この夏のことです。家族旅行の帰り、私が山道を運転するはめになってしまいました。

夫は風邪気味なので、中間地点までは私が運転するよということでナビに従って出発したところ、山の中のぐねぐね道が続くルートに入ってしました。私は気楽にゆっくり運転したいのですが、夫にとってはその中間地点がものすごく大事な目的地なので、何時までに到着したいという気持ちでイライラでいっぱいになっているようでした。気持ちはわからないでもありませんが、運転を代わってもらうわけにはいきません。

というのも、その前の旅行で、夫が疲れから高速道路で眠くなってしまったことがあったのです。話しかけても反応が悪く運転が微妙に怪しいし、休憩できるエリアまでは運転を続けてもらわなくてはならないし、助手席に座りながら私は恐怖でいっぱいでした。

今回は夫のイラチに付き合って恐怖体験はしたくなかったので、平静を装って運転を続けました。ゆっくり運転したいので、たまに後続車が来ると車線が広くなるところで脇によけて先に行ってもらいました。

そんなときに、夫が短くて大きなため息をつくのです。

安全運転第一だと思いながらも、長くプレッシャーをかけられていると、正常な判断が難しくなってきます。ぐねぐねの山道ではなくなってから、夫の言うように運転して(自分で判断しないで)、ヒアリハットが2回も起こってしまいました。本当に嫌な経験で、自宅近くのいつもの道を運転するのさえかなり怖くなってしまいました。

夫はというと、到着が予定より少し遅れたもののちゃんと中間地点の目的地で目的を果たせて、その後はご機嫌でした。

■ため息(他人に対する姿勢)はうつるかもしれない

この話には続きがあって、先日のこと、下の子どもが下手なことをやった横で、私が夫のようなため息にそっくりな舌打ちをしてしまったのです。なんということでしょうか! 

さらに、昨日は上の子どもが下手なことをしている横で、夫と同じため息をついてしまいました。やってしまった自分にショック。

私は人に対して舌打ちをする癖もため息をつく癖もありませんでしたが、舌打ちもため息も自然に出てきたしまったのです。なんというか、他人に対する姿勢のようなものがうつってしまったようです。

これには猛反省しています。無意識にうつってしまった癖ですが、止められればと思っています。出る瞬間は自然にやってくるので、出るまでのところで、他人の行動をジャッジするような気持ちを持たないようにしたいなと。子ども相手なら、「下手くそ!」と思うより、「やり方を教えて、練習する機会をつくらないとな〜」と思うのが健全ですよね。

ちなみに、夫にも旅行の数日後に抗議しました。謝ってはもらいましたが、本当にああいうことがもう起こらないのかどうか時間が経つまで証明されないので、まだ不安は残っています。

■職場でもよくないですよ!

夫のため息にひどく嫌な思いをしてから、ニュースを読んでいると、県知事が職員に対してため息やら舌打ちやらをしていたという話に行き当たりました。ちょうど同じようなことを経験したばかりだったので、どれくらい嫌な思いをしたか想像がつきました。うちでは夫と私の力関係は対等ですが、県知事と職員では職位に上下まであるので、その行為を注意するのも難しそうです。今回は不祥事といっていいような事態になっているので、公の場で知事の言動が批判されているわけですが、普通なら泣き寝入りでしょう。

ため息やら舌打ちやらで部下の仕事の効率を上げるのは難しいような気がします。むしろ不健全なプレッシャーがかかって、思考が停止して、仕事の質が下がる危険性がありそうです。上司がそういう行動をしてしまうと、やられた方がさらに部下にそういう行動をとって、組織の中で行動が伝染する可能性もありそうです。そんなことになったら、組織全体の効率が落ちていくでしょう。

相手の行動に理想と現実のギャップがあるから、当てつけのため息やら舌打ちやらが出るのだと思います。でも、考えてみてください。ため息やら舌打ちやらで、現実がコントロールできるでしょうか? 相手に合わせた課題と環境を与えたり、組織の構成員のモチベーションを高めるシステムを作ったりしなければ問題は解決しないでしょう。急がば回れですよね。怒りっぽい人(私もそうです)にとってはなかなか難しいことですが、自分の考え方や行動をじっくり考えてみることから悪い癖を直していくのをはじめるのがいいと思います。