インド、宇宙・深海探査に熱

2023年9月21日

インドが8月下旬に無人探査機「チャンドラヤーン3号」の月面への軟着陸に成功した。月への軟着陸成功はソ連(現ロシア)、米国、中国に次ぐ4か国目。南極近くへの着陸成功では世界初となった。約800万人がその模様に関するYou Tubeのライブ配信を見たとされる。ナレンドラ・モディ首相は訪問先の南アフリカでこの着陸を見届け、「これは、新しいインドの夜明けだ」と手放しの喜びようだった。
9月に入ると、同国初となる太陽観測衛星「アディティヤ−L1」の打ち上げに成功。同国のジテンドラ・シン科学技術相は「この9年間で、宇宙探査において米国やロシアに伍するまでになってきた」と胸を張った。
インドはまた、深海探査にも乗り出している。

無人探査機「チャンドラヤーン3号」の月面着陸に成功

インド宇宙研究機構(ISRO)は2008年10月に「チャンドラヤーン1号」の打ち上げに成功。2019年7月には、ロシアとの共同計画から単独計画に変更して同2号を打ち上げ、8月に周回軌道に入ったが、月への着陸には失敗した。そして今回の同3号の月面着陸となった。この成功はソ連(現ロシア)、米国、中国に次ぎ4か国目で、もたもたする日本を抜き去った。
「チャンドラヤーン3号」は着陸の翌々日に着陸機のハッチが開き、「ローバー」と呼ばれる車が月面を8メートルほど移動という。ISROはその映像を公開した。

打ち上げコストの安さ誇示——有用物質の存在も確認

南極への着陸成功もさることながら、インドは打ち上げコストの安さを誇示している。同3号の打ち上げ予算は約61億5,000万ルピー(7,400万ドル=約107億円)。同国のエコノミック・タイムズ紙によると、米航空宇宙局(NASA)の同様なプロジェクトの打ち上げコストは同3号打ち上げ予算の10倍近いという。
英国の通信社ロイターは、同3号の打ち上げ予算は「2013年に公開された宇宙スリラー映画である『ゼロ・グラビティ』の製作費より安い」と報じた。
同3号はすでに硫黄、鉄、カルシウム、アルミニウムの存在を確認。ISROは水が氷の状態で存在する可能性にも関心を示している。

太陽観測衛星「アディティヤ−L1」の打ち上げにも成功

インド宇宙研究機構(ISRO)は2023年9月2日、同国初となる太陽観測衛星「アディティヤ−L1」をアンドラプラデシュ州シュリハリコタのサティシュ・ダワン宇宙センターから打ち上げることに成功した。無人探査機「チャンドラヤーン3号」の月面着陸に続く成功となった。
太陽観測衛星「アディティヤ−L1」は約4か月後に地球から150万キロ・メートル離れた観測地点に到達してから16日間周回し、太陽の大気「コロナ」の過熱の仕組みなどを調べることになっている。周回に成功すると、アジアの国として初となる。
ジテンドラ・シン科学技術相は「宇宙探査でのこの9年間の大躍進で、わが国はNASAに伍するまでになってきた」と述べている(タイムズ・オブ・インディア紙2023年9月5日付)。

水深6,000メートルを目指す有人探査機「サムドラヤーン」

インドは深海探査にも乗り出している。
キレン・リジュジュ地球科学担当国務相は8月3日、インド初の有人深海探査の「サムドラヤーン・プロジェクト」を2026年までの5年間で実現する、と上院からの質問に書面で回答した。シン国務相は従来からエネルギーや金属開発面で海洋利用の重要性を説いており、「サムドラヤーン・プロジェクト」を「インド初の有人深海探査ミッション」と位置付けている。
探査機の名称は「MATSYA6000」。6,000メートルの深海まで潜水でき、乗員数は3名。潜水時間は通常状態で12時間、乗員の安全にかかわる事態時に96時間となっている。
プロジェクトはチェンナイの国立海洋技術研究所で技術開発などが進められている。その費用は407億7,000万ルピー(約709億円)。(以上、英文週刊誌India Today 2023年8月3日号による)

次回掲載予定は2023年10月下旬頃→10月27日に公開しました(こちら

著者:中村悦二
1971年3月東京外国語大学ヒンディー語科卒。同年4月日刊工業新聞社入社。編集局国際部、政経部などを経て、ロサンゼルス支局長、シンガポール支局長。経済企画庁(現内閣府)、外務省を担当。国連・世界食糧計画(WFP)日本事務所広報アドバイザー、月刊誌「原子力eye」編集長、同「工業材料」編集長などを歴任。共著に『マイクロソフトの真実』、『マルチメディアが教育を変える-米国情報産業の狙うもの』(いずれも日刊工業新聞社刊)。