株価クラッシュの前兆? 米国の気になる異常値

2023年4月25日

前回の当コラムで筆者は、「これから先、世界恐慌になる可能性がある」と書いた。それから1ヶ月が経過、株価はますます上昇し、読者から「一体どうなっているんだ」というお叱りを受けそうだ。

だが筆者はむしろ、その確信の度合いを強めている。というのは、米国のマネーストックや長短金利差をみると、過去100年間で数回しかない異常値が計測されているからだ。
おそらく来月上旬に予想される米国の利上げが相場の転機となるのではないか。

■米国のマネーストックM2、前年割れ

まず米国のマネーストックM2(現預金)をみると、昨年12月から3ヶ月連続で前年比マイナスとなった。これは過去100年間で5回しかない変事である(図1)。

図1(クリックで拡大図表示)
データ出所:NBER(全米経済研究所)、FRB

最初の1921年はともかく、29年は大恐慌、37年は第二次恐慌であり、2年後は世界大戦となった。49年もその翌年は朝鮮戦争である。つまりM2の前年割れは大変な凶兆なのだ。

■米国の短期・長期国債の利回り逆転

次に昨年11月以降、3ヶ月短期国債と10年国債の利回りが逆転している(逆イールド化)。
逆イールド化は景気後退の前触れとされ、実際、過去は半年~1年半のタイムラグを置いて不況になっている。だとすると、今年5月頃から景気後退が始まる可能性がある。

気になるのは、今回の逆イールド幅が史上2番目に大きいということだ(図2)。

図2(クリックで拡大図表示)
データ出所:Banking & Monetary Statistics 1914-1941、セントルイス連銀

過去3回の巨大・逆イールドは、1929年の大恐慌、73年の第一次オイルショック、79年の第二次オイルショックといった大混乱をもたらしたが、今度も同じような災厄が起きる怖さがある。

■業種間の株価天底一致

そして3点目は、日米の株式市場でいま、08年のリーマンショック以来、10数年ぶりに銘柄(業種)間の「天底一致」(一方の天井がもう一方の底となる現象)が出現していることだ。

日本製鉄と村田製作所の相対株価(個別株価÷TOPIX)をみると、89年~90年、00年、08年の3回に亘って天底一致となっており、今回、4回目となるパターンが完成した(図3)。

図3(クリックで拡大図表示)
データ出所:Yahoo! finance

米国でもエネルギー株とソフトウエア株の間で「天底一致」が出現しており、こちらも00年、08年がその局面だ(図4)。

図4(クリックで拡大図表示)
データ出所:WSJ電子版

注目は日米とも、その生成過程で平均株価のクラッシュが起きていることで、3度あったことは4度目もあるのでないか。

■ピンチはチャンス——投資の対象は?

では、一体どうしたら良いだろうか。ピンチはチャンスだという言葉もある。筆者はいま関係先に対し、「株価がクラッシュするのを待って、日本株なら鉄鋼株のような重厚長大株商社。米国株ならエネルギー株金鉱株といったインフレに強い株を買いましょう。それまでは米2年国債の保有をお奨めします」と言っているのだが、果たしてどうなるか。

次回掲載予定は2023年6月上旬頃 5月24日に公開しました(記事はこちら

著者:市岡繁男
1958年、北海道生まれ。81年一橋大学経済学部卒業後、住友信託銀行(現三井住友信託銀行)入社。支店や調査部を経て、87年から資産運用部門で勤務。1996年に同社を退職後は、内外金融機関やシンクタンクで資産運用や調査研究業務を務めた。 2018年に独立し、現在は財団や金融機関の投資アドバイザーを務める。著書に『次はこうなる』『次はこうなる 2023年』(ICI出版)がある。